1922年独ソ間にラッパロ条約が結ばれた。
国交の正常化、相互の賠償放棄、経済協力などの項目から成り立つこの条約は、
第一次大戦敗戦国ドイツと新生国家ソビエトがお互いに大国として復活する事を高
らかに宣言したものと見るべきなのかも知れない。
そしてその裏面では表出しない秘密軍事協定も同時に結ばれていた。
ドイツはベルサイユ条約によって禁止されていた軍事研究をソ連国内で秘密裡に
行え、またソ連もその果実を共有するというものである。
この秘密協定により、ソ連においてドイツ技術者による軍用機や毒ガスが研究開発
製造され、演習場や軍事学校も建設され両軍の交流は非常に活発なものとなっ
た。
そして1930年3月今、ある男を長とする独逸技術者集団がレニングラードの土を踏
んだ。
『赤軍は再び大陸軍として復活しなければならない』
『ドイツが今再び精強となるためには』
『戦車だ!』
『優秀な戦車こそがそれを可能にする。
グロッテ、君にはぜひソ連で思い切りその才能を発揮して
新時代の戦車を設計・開発して欲しい』
戦車。 戦車、戦車、戦車!
希望を胸に秘めその男はやってきた。
その男の名はエドゥアルト・グロッテ。
彼は自分が本当に世界の戦車史に多大な影響を与える事をまだ知らない。
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