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マーティン・ベイカーM.B.5は第二次大戦における英国最良の戦闘機と言われます。
大戦末期に完成した本機はラジエーターのレイアウトがアメリカのP-51ムスタングと同じ
ためパッチもん扱いされそうですが、機体構造等は全く似ていません。マーティンベイカー
の主張通り彼らの試作したM.B.3の正統発展型と言える物です。M.B.5は取り外しやすい
外板により内部にアクセスし易く、マーティンベイカー社もメンテナンスの優位性を誇らしげ
に語ります。ですがそれはこの時期において既に過去の遺物となった鋼管構造によるもの
です。この時代の航空機の主流は金属モノコックで、それ以前が鋼管羽布張りです。確か
に鋼管羽布張りは頑丈で被弾にも強いのですが重量的に不利なため金属モノコックに取
って変わられました。M.B.5は鋼管金属張りという変則的な構造なのです。
スピットファイア初期型〜中期型及びP-51ムスタングB型以降に搭載されたロールスロ
イス・マーリンより強力なロールスロイス・グリフォンエンジンで二重反転プロペラをブン回
し、太短い主翼を持った独特のスタイルはどこか恐竜を思わせ、日本人から鰹節などと形
容されたP-51に比べれば異質です。
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最大出力
緊急出力
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最大速度
(時速/高度)
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最大速度
(時速/高度)
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初期上昇率
(m/分/高度)
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上昇率
(m/分/高度)
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上昇率
(m/分/高度)
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P-51D |
1490
1720
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703/7620 |
1059/1524 |
835/6096 |
703/9144 |
XP-51F |
1450 |
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749/8840 |
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1212/5940 |
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XP-51G |
1675
2150
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796/6950 |
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1793/6096 |
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P-51H |
1380
2270
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714/1524 |
745/4572
784/7620
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1631
1016/1524
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914/4572 |
732/9144 |
スピットファイアMk.21 |
2050 |
676/3657.6 |
731/7924.8 |
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762/6096 |
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スパイトフル |
2375 |
658/SL
703/1676.4
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777/7924.8 |
1472/SL |
1244/6096 |
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M.B.5 |
2340 |
636/SL
684/1828.8
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740/6096 |
1158/SL
1219/2133.6
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938/6096 |
691/10363.2 |
P-51後期型とスーパー・スピット、そしてグリフォンのために造られたといっても過言では
ないスパイトフルと比較してみましょう。マーリン搭載のムスタングは不利ですが、XP-
51GとP-51Hは水メタノール噴射技術の向上で緊急出力時2000HPを越えグリフォンに比
肩します。
軽量試作型のXP-51F&Gは武装や燃料タンク容量がかなりはぶかれており実用型とは
言い難いので無視しましょう(笑)
するとP-51D、スーパー・スピットより勝るが、P-51H、スパイトフルには劣るという結果
になります。
つまり自分より古い設計機より勝るが、同時期のメジャー戦闘機メーカー設計機には劣っ
ていると言うごくごく当たり前の結論がでてきます。
戦後マーティン・ベイカーが戦闘機の夢を捨て、航空機用射出座席に活路を見出したのは
誠に賢明な判断だったと言えましょう。
02/08/24
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