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本編は八八艦隊の真価の続きです。
お読みでない方はそちらから先にお願いいたします。
1.出題
八八艦隊とダニエルズ計画艦隊が戦った場合純粋に設計コンセプトに優れた八
八艦隊の方が有利なはず。
16隻隊16隻の決戦において八八艦隊の勝利は間違い無い所なのですが、実際戦
った場合そうはならなかった可能性が大きいのです。
戦術的な事ではありません。あくまでもハードウェアの問題です。それはなんでしょ
う?
2.ジュットランドのもたらしたもの
答えは A.砲塔構造
B.防焔システム
C.砲弾信管
この三つです。
ジュットランド海戦で英主力艦が轟沈したのはこれが理由です。
巷間言われる巡洋戦艦の装甲の薄さが主原因ではないのです。
巡戦と同様の被害を受けた場合、英戦艦も轟沈する可能性大です。
A.砲塔構造
まず英式砲塔構造は、砲塔装甲が貫徹され内部に敵砲弾が飛び込んできた場
合、そのまま弾火薬庫までダイレクトに突入され易い事。この点、独式&米式は突
入されにくいです。
また、英国式は重い砲弾と軽い装薬を1セットで運ぶので、砲塔内の色々な箇所に
装薬が散在するわけで誘爆し易い。この点でも砲弾と装薬を別ルートで運ぶ独式
&米式は優れています。
B.防焔システム
次に敵弾が突入した場合、内部の火薬(装薬)が暴露していて誘爆し易い事。
火薬庫と揚薬筒(装薬を砲尾まで運ぶ通路)の前後に防火シャッターが存在しなか
ったため、誘爆し易かった事。
ドイツはジュットランド直前のドッガ−バンク海戦でこれに気付き、防焔システムを
突貫工事で全艦に導入しました。
C.砲弾信管
最後に、英式信管は調定秒時が短すぎ、敵装甲に充分食いつく&貫徹する以前
に働くため、実質的な貫徹力に劣ります。
独式大遅動信管はこの点、敵装甲を貫徹し、敵艦内部に充分突入してのち働くた
め効果大でした。
英式信管の欠陥は同じ流れを汲む日本海軍が日露戦争の日本海海戦で露呈し
たものだったのですが、日英とも深刻に受け止めず、改善していなかったのです。
3.英国海軍の黄昏
英海軍は上記の欠陥中、防焔システムはジュットランド海戦後、弾火薬庫の装
甲増加工事と共に直ちに施しました。
砲塔構造に関しては、既に砲塔設計が完了していたフッド(と、云うよりQE&R&リナ
ウン級の改良型)の次の艦から米式に改めました。
G3級巡洋戦艦=インヴィンシブル(未成)
N3級戦艦=セント・アンドリュー(未成)
35000t級戦艦ネルソン
40000t級高速戦艦ライオン(未成)
45000t級高速戦艦ライオン改(未成)
がそうです。
35000t級高速戦艦キング・ジョージXは四連装のため従来方式との折衷案(米式
はかさばるのです)。
45000t級高速戦艦ヴァンガードは旧式砲塔流用のため英式のままでした。
つまり英国で完成した艦のうち上記の改良が盛り込まれたのは、実はネルソン
級2隻のみだったのです。軍縮条約などの影響もありましょうが、英国と英国海軍
の黄昏を象徴しているような気がしてなりません。・・・
4.八八艦隊vsダニエルズ計画艦隊
米海軍ダニエルズプランには上記の戦訓が導入されました(信管は除く)。
それに対し八八艦隊計画艦には全くこの戦訓が導入されませんでした。次にくる
金剛代艦さえもそうです。
日本においてこれらが完全に導入された戦艦は大和を待たなければなりませんで
した。
改装戦艦には防焔システムと大遅動信管は導入されましたが、砲塔構造自体は
英式のままでした(構造が違いすぎて無理なため)。
このように表面上は優秀な八八艦隊計画艦も実戦においてはダニエルズ計画艦
に一方的に爆沈される可能性を持っていたのです。
もっとも速度優位性や他の性能が高いため、痛み分けにはもっていけると思うの
ですが・・・
5.真の八八艦隊
最後にもう一つ、通説では
長門級 |
2隻 |
加賀級 |
2隻 |
天城級 |
4隻 |
紀伊級 |
4隻 |
13号艦級 |
4隻 |
で構成するとされる八八艦隊計画艦ですが、実際には
だったらしい事が最近の研究で指摘されています。
天城級の設計は会心の作だったらしく、同艦を史上空前の12隻量産により単価を
下げる事が同計画にとって最良の実現方法だったようです。
アメリカが必死に軍縮を模索したのも、ダニエルズ計画艦の旧弊思想による設計
や遅々として進まない建造状況と照らし合わせて、天城級量産化計画に恐怖を覚
えたからなのかもしれません。
なんとなれば上記戦訓が八八艦隊計画艦に盛り込まれていない事は察知していな
いでしょうし、砲塔構造以外は気が付きさえすれば極めて短期間に実施できる事
でしたから。
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