第一次大戦前夜、トルコ海軍で新造超弩級戦艦が英国に発注されました。
トルコと対立関係にあったギリシャでもこれに対抗すべく超弩級戦艦建造を企て、
ドイツのフルカン社に設計建造を依頼しました。
元々、このような強力な艦種の必要性を感じていなかった
同国での最初期案は非常に慎ましやかなものでした。
弩級戦艦エスパーニャ(スペイン)
排水量13800トン、全長139.6mと言うサイズは
それまで世界最小を誇っていた?
スペインの弩級戦艦エスパーニャ級の15800トン、全長139.9mを下回り、
着工・竣工していれば
「世界最小の弩級戦艦にして超弩級戦艦」
というダブルタイトルホルダーになっていたはずです。
世界最小とはいっても
355.6mm連装砲塔3基(6門)、152.4mm副砲・76.2mm補助砲各8門、
450mm魚雷発射管2門と相応以上の火力を持ち、
舷側主甲帯及び主砲塔254mm、甲板50mmと装甲も
まずまずのものを持っていました。
速力も23ノットと当時としては高速な部類。
しかしながらトルコ戦艦のさらなる増勢と
他ならぬ海軍内部からの反対に会いこの第一案は挫折、
艦型を増大した第三案が決定案として建造される事となったのです。
サラミス・ヴァリアント3
第一案も決して悪いものではありませんでしたが
「もう少し強力で他国の戦艦と並べて見ても見劣りしない戦艦を」
と云う事で改めて独フルカン社に設計させた最終案です。
第一案と比較した場合、装甲防御は水平甲板が強化された程度でしたが、
355.6mm連装砲塔がさらに1基、152.4mm副砲・76.2mm補助砲が1.5倍、
魚雷発射管が510mm3門と火力が非常に強化されました。
常備排水量は19500トンに、全長は173.7mと大型化しましたが、
砲配置の良好性もあり他国の超弩級戦艦と比べても遜色ないものとなりました。
砲配置や艦橋などに独超弩級戦艦バイエルン級との
類似性が見られるのも興味深い所でしょう。
その後晴れて建造着手された同艦も
第一次大戦勃発によりドイツに接収されてしまいます。
しかしながら別途米国に発注されていた
主砲と主装甲が入手できなかった上、
ヤード・ポンド規格とメートル法の違いもあり
ついに完成させる事はできませんでした。
ギリシャ戦艦として完成された場合ヴァシレウス・ゲオルギオス、
独艦として完成された場合
ティルピッツと改名される予定だったと言われますが、
後者は疑問符が付けられているようです。
*ここでご紹介した各艦側面図はWarBirds主力艦規格
自作アイコンを倍に引き伸ばしたものです
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