帝國最後の前弩級戦艦




インペラトール・パウェル一世(上)とその初期案(下)

帝國最後の前弩級戦艦
準弩級戦艦インペラトール・パウェル一世

ロシアの前弩級戦艦は概ねフランス式設計と言える物でした。
さらに日本との緊張が高まるにつれ、
戦力の増強と技術導入の意味も兼ね
フランスとアメリカに新型戦艦を発注しました。
前者がツェザレウィッチ、後者がレトウィザンと命名され
以後、バルト海艦隊用戦艦がツェザレウィッチ即ち仏式、
黒海艦隊用戦艦がレトウィザン即ち米式設計を踏襲しました。
性能的にはほぼ拮抗していた両艦ですが
舷側主甲帯及び主砲塔装甲が後者228.6mmに対し250mm、
副砲が後者は砲郭式で装甲127mmに対し砲塔式で装甲150mm、
加えて世界初の水雷防御隔壁装備と
ツェザレウィッチの優秀性はロシア技術者を魅了しました。
そのためロシアの次期主力艦はツェザレウィッチを基盤として設計されます。
これがボロディノ級ですが当時の仏式戦艦の欠点の一つ
復元性の劣悪さをさらに助長させるような改設計をしてしまい
正にこのために後の対馬沖海戦に参加した4隻中3隻が沈没
残る1隻は降伏という憂き目に逢ってしまいます。


さて今回のお題インペラトール・パウェル一世級は
ボロディノ級に続いて建造されたバルト海艦隊用戦艦なのですが
ここでトップの二艦を御覧下さい。
下の初期案は正しくボロディノ発展型と言える物で間違い無くフランス式設計。
そして実際に建造されたインペラトール・パウェル一世級は英米式設計。
つまりそれまでのツェザレウィッチの仏式設計から
レトウィザンの米式設計に取って代わられちゃったと云う事です。
ものの本には素直にボロディノ(仏系)改良型って書いてていたりしますが、
装甲配置やカゴマストなどきちんと見ていきますと
これはどう考えてもそんな答えにはなりません。
ようするに対馬沖海戦の敗戦理由を自分たちじゃなくて仏式設計にあり、
と露西亜海軍は責任転嫁してしまったんですね。
確かに仏式設計にはマズイところもありますが、
それを拡大するような改悪設計をしたのは他ならぬ自分たちなのに・・・

蛇足ですが対馬沖海戦では砲塔式副砲は発射速度等に難があったため、
初期設計では全副砲が砲塔式だったのに対し
これを半数程度にとどめ砲郭式も併用しました。
また極端に艦尾寄りに配された第二主砲塔の意味は
射界確保と後部副砲に対する配慮と説明されますが、
これもなんて事なく上部構造物が長かった初期設計当時の
砲配置がそのまま残ってしまっただけのような気がします。
さらに本艦は対馬沖海戦戦訓により浸水防止のため
舷窓廃止という超大胆な新構想も実現しています。
これは第二次大戦期に米新戦艦が行った事と同じなのですが
アメリカの場合通風能力や電灯の強化などを行い
環境劣化に対処したのに対し、
元々兵に劣悪な生活環境を強いていたロシア海軍
多少の通風強化では焼け石に水で病人続出だったそうな。

色々文句を付けて来ましたが
本艦が後のロシア弩級戦艦に与えた影響も大きく
特にガングート以降の独特な装甲配置は
本艦を基礎として発達したものと言っても過言ではないでしょう。



*ここでご紹介した各艦側面図はWarBirds主力艦規格
  自作アイコンを倍に引き伸ばしたものです
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