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本艦はノルウェー最後の海防戦艦になるはずだった艦です。
ノルウェーの1912年度海軍拡張計画には2隻の海防戦艦が含まれていました。
これが今回御紹介するボルグヴィンとニダロスで
スウェーデンのスヴェリェ級等とほぼ同世代、
北欧海防戦艦史の掉尾を飾る存在となるはずでした。
建造はその前のノルゲ級海防戦艦同様
アームストロング社エルズウィック造船所、
設計はかのユースタス・テニスン・ダインコートに依頼されました。
ダインコートは4つの設計案を提示します。
まずノルウェーのドックに収容不可能な
716、717案が除外され
残ったうちでより大型な715案が原型として選ばれました。
この715案に100mm砲2門と450mm水中魚雷発射管を増備させ
完成案となりました。
ボルグヴィンとニダロスと名付けられた両艦は早速
アームストロング社エルズウィック造船所で建造に取り掛かりました。
ですが第一次大戦勃発により英国艦の建造が急がれ
両艦の建造は遅延、そうこうしているうちに
1914年11月英国によって買収され
1915年1月9日英国海軍艦として改めて発注されました。
1915年4月ボルグヴィンはグラットン、ニダロスはゴルゴンと改名され
1917年9月に以下の改設計案が完成します。
上部構造物の変更、
主砲と副砲を英国製弾薬が使用可能に改修、
主砲はさらに仰角増大、
100mm砲撤去、代わりに3インチ砲と40mmポムポム砲装備、
航続距離増大のため燃料タンクの二重底を改修、
全長の75%にも渡る巨大なバルジ装着(全幅が1.47倍にもなった)
こうして両艦はモニターに改造される事になってしまいました。
モニター グラットン
ゴルゴンは一足早く1918年5月1日完成し
6月6日ドーバーに配属されダンケルク・オステンド間の
独逸砲台に対する艦砲射撃任務に7月26日〜10月15日まで従事します。
この間8月31日ようやく完成したグラットンも
9月11日ドーバーに配属されますが
間もない16日、船体中央部6インチ砲火薬庫が謎の爆発、
主砲火薬庫が誘爆し周りに被害が出る事が懸念され
魚雷により処分されてしまいます。
この後ゴルゴンもグラットンの爆発原因調査のため後方に下げられます。
戦後1919年9月には予備艦隊に編入、
ノルウェーに再度引き渡す交渉がもたれますが、
バルジにより巨大化した船体は
ノルウェーのホルトン乾ドックには入らないため受け取りは拒否。
アルゼンチン、ペルー、ルーマニアにも打診しましたが実現せず、
結局英国海軍の爆薬実験に使用され
最終的に1928年ペンブルックでスクラップ処分されました。
もし当初予定通りノルウェー艦となっていれば
第二次大戦においてナルヴィクで第三帝國を迎撃していたのは
旧式なノルゲとエイズヴォルドだけではなく
少なくともニダロス(ゴルゴン)が同国最新最強艦として加わっていたはずで
ノルウェーの運命自体は同じだったにせよ
同海戦の様相はまた違っていたはずです。
大国によって運命を翻弄された姉妹に涙を禁じ得ません。
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716案 |
717案 |
720案 |
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715案 |
ボルグヴィン |
グラットン |
常備排水量 |
5500 |
6000 |
4000 |
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5000 |
4900 |
5705 |
全長 |
97.54 |
97.54 |
76.2 |
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88.39 |
90.00 |
90.00 |
全幅 |
17.37 |
18.90 |
17.37 |
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15.70 |
15.24 |
22.45 |
喫水 |
5.18 |
5.64 |
5.18 |
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5.03 |
5.03 |
5.18 |
馬力 |
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4000 |
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速力 |
16.5 |
17.0 |
14.5 |
|
16.5 |
16.5 |
12 |
主機/軸数 |
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2 |
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缶 |
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4 |
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主兵装 |
240mmL50
×2×2
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305mmL?
×1×2
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240mmL50
×2×2
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240mmL50
×1×2
|
240mmL50
×1×2
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233.7mmL51.35
×1×2
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副砲 |
150mmL50
×1×4(6?)
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150mmL50
×1×4(6?)
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150mmL50
×1×4
|
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150mmL50
×1×4
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150mmL50
×1×4
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152.4mmL48.92
×1×4
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高角砲 |
100mmL?
×1×4
|
100mmL?
×1×4
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76.2mmL?
×1×2
|
|
100mmL?
×1×4
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100mmL?
×1×6
|
76.2mmL?
×1×2
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機銃 |
なし |
なし |
なし |
|
なし |
なし |
40mmpompom
×4
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魚雷 |
450mm×? |
450mm×? |
450mm×? |
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450mm×2 |
450mm×4 |
なし |
舷側装甲 |
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177.8 |
177.8 |
艦首舷側 |
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101.6 |
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艦尾舷側 |
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76.2 |
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舷側上部 |
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101.6 |
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水平甲板 |
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25.4 |
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傾斜甲板 |
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50.8 |
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主砲塔前楯 |
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203.2 |
203.2 |
主砲塔側面 |
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152.4 |
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主砲塔天蓋 |
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76.2 |
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副砲塔前楯 |
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152.4 |
|
副砲塔天蓋 |
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50.8 |
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司令塔 |
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203.2 |
203.2 |
*装甲数値ですがcm法のキリの良いものかもしれません
ボルグヴィン
>グラットン
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ニダロス
>ゴルゴン
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起工 1913.02.24 |
起工 1913.05.26 |
進水 1914.06.09 |
進水 1914.08.08 |
竣工 1918.08.31 |
竣工 1918.05.01 |
1918.9.11
ドーバー配属
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1918.6.6
ドーバー配属
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1918.9.16
副砲火薬庫出火
海没処分18:15
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1918.7.26〜10.15
艦砲射撃任務
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1919.9
デボンポート
予備艦隊
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1925.5〜1926.3
サルベージ.廃棄
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1922〜1928
爆薬実験・標的艦
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竣工1928
ベンブルック
解体
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*ここでご紹介した各艦側面図はWarBirds補助艦艇規格の
自作アイコンを倍に引き伸ばしたものです
*ボルグヴィン アイコンは改造状況と
ノルウェー博物館に展示されてる同艦模型の部分写真を
元に私の想像で作成したものです。
ですから申し訳ありませんが正確かどうかは保障できません。
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