FV4601 MBT-80




FV4211

FV4601 MBT-80 (イギリス)

現在英国の主力戦車はチャレンジャー2ですが、
チャレンジャー2チャレンジャーの改良型です。
何を今更当たり前の事をと言う感じですが、まあちょっとお聞き下さい。
でもってそのチャレンジャーは元々イランから新型戦車の要請を受けて開発され
シール・イランと名付けられるはずでした。
当時のイランはまだパーレビ国王がブイブイ言わせてたころで
金に飽かせてF-14戦闘機とか世界中の超高価な兵器を買いまくってました。
シール・イラン戦車もその一環で
元々重装甲で強火力なチーフテンの足回りを改良したシール1(FV4030/2)
これに世界で初めてチョバムアーマーを纏わせた
シール2(FV4030/3)が計画されたのですが、
イラン革命によってパーレビ政権は倒れシール・イランは宙ぶらりん。
ですが転んでもただでは起きない英国人、
シール1の名前をハリドと書き換えヨルダンに売りつけ、
より強力なシール2はちょこっと手を加えこれ幸いと自国の新型主力戦車としたのです。
これがチャレンジャー戦車(FV4030/4)です。ってもう御存知ですよね。


本題はここからです。チャレンジャーは旧式化したチーフテンに変わって
英国の主力戦車となったわけですが
実際のところ次期主力戦車はシール・イラン(FV4030)とは別に開発中でした。
やはりチーフテンをベースに試作途中だったこの戦車がMBT-80
来たる80年台を担うべく1970年台に開発が開始されたものです。
FV4601 MBT-80の特徴は
1.
先進的な射撃統制装置。
砲手、車長ともに安定化パノラマサイトを持つ。
これは後のチャレンジャーより進歩したものである。
2.
口径可変式砲の採用。
砲身交換のみで120o砲としても140o砲としても使用できる。
これは新規に140o砲開発に着手するより
開発済みの120o砲の技術が流用できるメリットがある。
ただし、当面は120o砲を搭載。
3.
チョバムアーマー採用と軽量化の両立。
前面にチョバムアーマーを採用した車体前半はスティール製。
車体後半はアルミをステンレス鋼でサンドイッチした物を採用。
4.
従来の英国戦車の欠点である機動性の強化。
1500馬力エンジンの導入。
後のチャレンジャーは1も2も1200馬力。
輸出用最新型チャレンジャー2Eで初めて1500馬力エンジン搭載。

このように部分的にはずっと後に登場するチャレンジャー2さえしのぐ
強力なものを目指していました。
ただ、このような理想的戦車は当然開発費用も天文学的数字で
それが不況によりさらに高騰化。
付け加えるならばこの計画以前にチーフテン後継を目指した
英独共同戦車開発計画FMBTがコケていましたから事態は切迫していました。
この状況で前述のシール・イランが転がり込んできたので
渡りに船とMBT-80を放棄しこれに乗り換えたわけです。
*開発担当は共にロイヤル・オードナンス


ここに挙げている写真もMBT-80そのものでは無く、
チーフテンMk.5をベースにMBT-80の研究内容を盛り込んだ試験車輌にすぎません。
その意味ではチーフテン開発用にセンチュリオンを改造した40tセンチュリオン
同じ立場の車輌です。
正式な名称はFV4211
シール・イラン(FV4030)チーフテン改造車体を流用し、
これにやはりチーフテンの砲塔に手を加えた
WSD (Weapons System Demonstrater)を組み合わせたものです。

ただ、さらに哀しいのはMBT-80計画中止の後、
この砲塔と車体は別個に開発されていたため
展示のため送られたボービントン博物館で
初めて一つの車輌として組み上げられた、と言う事でしょう。


FV4211

FV4211



今回の記事は
Arcane Fighting Vehicles
The Tank Museum - Bovington
Jed Military enthusiasts directory
を参考とさせていただきました。

03/01/19




FV4202「40tセンチュリオン」

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