G3巡洋戦艦とN3戦艦



G3巡洋戦艦とN3戦艦

 第一次大戦直後の八八艦隊と米ダニエルズ・プラン艦隊はここでも何度もでてき ましたが、対抗上イギリスにも同様の計画がありました。
大戦の結果経済が疲弊した英国には余力がなかったため日米の各16隻に対し半 数の8隻構成でした。が、日米より後発だったのとジュットランド海戦当事者だった ため、より強力な設計となっていました。
これがポストジュットランド型戦艦N3級(仮称セント・アンドリュー級)4隻とポストジュ ットランド型巡洋戦艦G3級(仮称インヴィンシブル級)4隻です。
N3級戦艦の予定艦名は英国四大守護聖人、
セント・アンドリュー=スコットランドの守護聖人
セント・ジョージ=イングランドの守護聖人
セント・パトリック=アイルランドの守護聖人
セント・デヴィット=ウェールズの守護聖人
からきています。ちなみにセント・デヴィット以外の三聖人の旗印を合体させるとユ ニオン・ジャック(ユニオン・フラッグ=英国国旗)になると言うこれ以上無いくらい の栄誉ある名前ですね。
守護 旗名 旗印
セント・アンドリュー スコットランド St. Andrew's Cross 青地に白の斜十字
セント・ジョージ イングランド St. George's Cross 白地に赤十字
セント・パトリック アイルランド St. Patrick's Cross 白地に赤の斜十字
セント・デヴィット ウェールズ Dragon 龍(ウェールズはイングランドに含む)


G3級巡洋戦艦の艦名は史上初の巡戦に付けられた名前インヴィンシブルがその ままネームシップであり、二番艦以降も初期の巡戦名インフレキシブルインドミタ ブルインディファティガブルがそのまま流用される予定だったらしいです。

それではちょっと比較してみましょう。

1.基本要目

艦名 常備排水量 全長 全幅 喫水 軸馬力 速力 航続力
速力

長門 33900 215.80 28.96 9.14 80000 26.5 5500 16
加賀 39900 234.09 32.31 9.37 91000 26.5 8000 14
天城 41200 252.37 32.27 9.45 131200 30 8000 14
紀伊 42600 252.37 32.49 9.70 131200 29.75 8000 14
13号 47500 274+ 32.4+ 9.75 150000 30 8000 14



コロラド 32500 190.5 29.7 9.2 27300 21 8000 10
サウスダコタ 43250 208.5 32.2 10.0 60300 23 8000 10
サウスダコタ 43250 208.5 32.2 10.0 60300 23 8000 10
レキシントン 43500 266.5 32.2 9.1 180000 33.25 10000 10



G3 48350 262.7 32.3 9.9 160000 31 ? ?
N3 48500 248.4+ 32.3 10.0 80000 23 ? ?
ネルソン 33313 216.4 32.3 8.6 45000 23 7000 16

*ネルソンのみ基準排水量です。
*紀伊級とG3級は計画速力を達成できない可能性が高いです。
 適正値は、紀伊級→28ノット台、G3級→30ノットでしょう。


2.主砲攻撃力

艦名 主砲 攻撃力 攻撃力(換算)
主砲
口径
門数 最大射程
最大仰角
砲口斉射
エナジー
命中
込み
斉射
弾量
命中
込み
近距離
攻撃力
遠距離
攻撃力

長門 410.0
45
2*4 30150
30
2496 882 8000 2828 70 70
加賀 410.0
45
2*5 約32800
35
3120 986 10000 3162 79 79
天城 410.0
45
2*5 約32800
35
3120 986 10000 3162 79 79
紀伊 410.0
45
2*5 約32800
35
3120 986 10000 3162 79 79
13号 460.0
45
2*4 約38400
35
3519 1244 11280 3988 100 100



コロラド 406.4
45
2*4 31090
30
2401 849 7656 2707 68 67
サウスダコタ 406.4
50
3*4 約32600
30
4171 1206 11485 3315 96 83
サウスダコタ
457.2
48
2*4 3562 1259 10520 3719 101 93
レキシントン 406.4
50
2*4 約32600
30
2785 984 7656 2707 79 67



G3 406.4
45
3*3 37390
40
2595 865 8361 2787 69 69
N3 457.2
45
3*3 38405
40
3886 1295 11907 3969 104 99
ネルソン 406.4
45
3*3 37390
40
2595 865 8361 2787 69 69


3.装甲防御力

艦名 舷側装甲 水平甲板 バーベ
ット
砲塔天蓋
舷側 傾斜
角度
傾斜甲板 傾斜
角度
水平
甲板
水平
甲板
装甲
傾斜
角度

長門 304.8 0 25.4×3 -40 69.85 50.8 304.8 152.4 -5
加賀 279.4 15 25.4×3 -30 101.6 63.5 304.8 152.4 -5
天城 254.0 12 31.75+38.1 -30 95.25 47.625 279.4 152.4 -5
紀伊 292.1 15 31.75+38.1 -30 117.475 47.625 304.8 152.4 -5
13号 330.2 15 31.75+38.1 -30 127.0 47.625 330.2 177.8 -5



コロラド 342.9 0 なし 88.9 38.1 342.9 127.0 -5
サウスダコタ 349.25 -5 なし 88.9 31.75 342.9 127.0 -5
レキシントン 228.6 11.8 なし 57.15 50.8 228.6 127.0 -5



G3 355.6 18 19.05 7 203.2 12.7 355.6 203.2 0
N3 381.0 18 19.05 7 203.2 12.7 381.0 203.2 0
ネルソン 355.6 18 19.05 7 158.75 12.7 381.0 177.8 0


4.攻防戦闘力

判り易く整理してみます。
防御力にはバーベットと砲塔天蓋も加味します。
私独自の計算なのであくまでも目安です。
また速力は加味しません。
全ての基準は13号艦を100としています。

艦名 攻撃力 防御力 戦闘力

長門 70 70 70 93 83 76 65 58 53
加賀 79 79 79 90 89 89 70 70 70
天城 79 79 79 81 82 83 63 64 65
紀伊 79 79 79 91 90 90 71 71 71
13号 100 100 100 100 100 100 100 100 100



コロラド 68 68 67 94 83 71 63 56 47
サウスダコタ 96 90 83 95 82 70 91 73 58
サウスダコタ 101 97 93 95 82 70 95 79 65
レキシントン 79 73 67 63 64 65 49 46 43



G3 69 69 69 101 120 130 69 82 89
N3 104 101 99 108 124 130 112 125 128
ネルソン 69 69 69 101 111 108 69 76 74

おわかりでしょうか。G3N3こそ真の意味でポストジュットランドとしての防御力を 持った艦だったのです。
特にN313号艦を遥かに凌ぐ戦闘力を持ち、13号艦さえも7ノットの速力優位を 生かす戦術機動をするか、退避する以外ありません。
G3N3に次ぐ重装甲ですが、実際16インチ砲の貫徹力は凄まじく八八艦隊計画 ダニエルズ計画艦でさえ対応防御とは言い難く、G3において初めて16インチ 対応防御が達成されたわけでその高速力と合わせて本艦こそ唯一真のポストジュ ットランド戦艦と言えます。

なぜG3N3はこのように強力だったのか?
それは艦橋と煙突の間に第三砲塔を置くという艦首集中砲塔配置に準ずる配置 で、装甲の集中化に成功したからです。とは言え、実際に建造された場合、艦橋 に対する爆風の影響や、後方に指向可能な主砲が無い事、全体の重量バランス の難しさなど欠点も併せ持っています。

このように特色のあるG3N3もワシントン軍縮会議の 結果、多くの八八艦隊計 画艦ダニエルズ計画艦と共にキャンセルされてしまいました。


5.ビッグ7―三大艦隊計画の落とし子たち―

とは云え、イギリスは基準排水量35000t以下の16in砲搭載戦艦2隻を建造する権 利を得ました。
G3N3は45000tオーバーですから建造はできません。そこでG3の設計思想を流 用し、速度を7ノット下げ、水平防御を幾分減らした戦艦を設計しました。装甲を減 らしたとはいえ、実弾射撃実験にて16in砲弾防御には水平装甲は6inで充分との 結果を反映させた物なので批判の対象には当たりません。
この戦艦がネルソン級2隻(2番艦ロドネー)です。

では軍縮期間中(ネイヴァルホリディ)日本の長門級2隻、米国のコロラド級3隻と 共に世界最強の「ビッグ7」と云われた各艦を比較してみましょう。

艦名 攻撃力 防御力 戦闘力
日本 長門 70 70 70 93 83 76 65 58 53
アメリカ コロラド 68 68 67 94 83 71 63 56 47
イギリス ネルソン 69 69 69 101 111 108 69 76 74
* 56 56 57 101 111 108 56 62 61

砲弾重量が軽いため日米艦より主砲が一門多いにも関わらず攻撃力は高くあり ません。
反面、防御力は異常に高く結果的に総合戦闘力では圧倒的な強さを誇ります。遠 距離砲戦ならばネルソン級2隻はコロラド級3隻と互角に戦えるはずです。
ですがネルソンはこの戦闘力を手に入れるため設計上、非常な無理をしていま す。
艦首に3連装砲塔を3基集中配置しているのがそれです。
この英国海軍史上最強の火力を集中配置した事は、予想だにしない事態を引き 起こしました。爆風問題です。
射撃の際生じる爆風は非常に強力でその対策問題は重要です。ですがネルソン では予想以上の爆風のため、真横より後方に9門斉射を行おうとすると艦橋の窓 ガラスが砕け散るほどの衝撃で戦闘指揮困難になるという事態が発生したので す。
そのため、実際の戦闘能力は上記の*マークの数字となります。

条約明け新戦艦はキングジョージX級が14in砲、戦後完成のヴァンガードが旧式 15in砲の再利用。
16in砲採用新戦艦ライオン級、ライオン改級は未成に終わったため、結局英国最 強の攻撃力を持った戦艦はネルソン級だったのです。





クィーン・エリザベス代艦級・1927〜29計画案(後編)

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