ド・グラース嬢にのびるナチスの魔の手





ド・グラース嬢にのびるナチスの魔の手

フランス海軍最後の軽巡洋艦ド・グラースは大戦後、
対空巡洋艦へと華麗なる転身をとげました。
しかしながらそれ以前、フランス崩壊による状況の急変は
彼女にも及ぼうとしていたのです。

建造場所のロリアン海軍工廠ごと接収された彼女は
やる気の無いフランス人のサボタージュもあって
宙ぶらりんの状態でおかれていました。
これに目を付けたナチス・ドイツは1942年8月
彼女を空母に改装する研究を始めたのです。



ド・グラース原案(左)と空母改装案(右)断面図
ほぼ同一縮尺(なはず・・・)

上図を御覧いただければお分かりのとおり
装甲甲板以下の機関部等はいじらずに
舷側にバルジを装着して太らせ
大きな格納庫や飛行甲板を確保しています。
これは巡洋艦を空母に改装する場合の必須手段で
我が国の伊吹も両舷各1m計10パーセントの全幅増加をしています。
これに対しド・グラースの増着したバルジは船体に比し
かなり巨大なもので両舷各3.1m計34パーセントの全幅増加。
基準排水量で1900トンの増加でした(基準9900トン:満載11400トン)。
機関部は原案そのままだったので結果的に
速力は1ノット減の32ノットとなりました。

飛行甲板の大きさは全長177.5m×全幅30mと
英空母カレイジャスに匹敵しますが
元々が巡洋戦艦級のカレイジャスと違い軽巡でしたから
格納庫は全長145m×全幅15mと小さ目の物が一段のみ。
搭載数もBf109G×11機、Ju87D×12機とごくわずかでした。
しかしながらドイツ空母だけあって
105mm両用砲×2×6、37mm機関砲×2×6、20mm機銃×4×6
と火力は比較的強力なものが用意されています。


明けて1943年、ドイツ軍が各戦線で防戦に廻りだすと
悠長な事は言ってられなくなり
ド・グラースの改装計画も自然と中止されたのでした。



仏最後の水上砲戦用軽巡ド・グラース

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